風の大地(すいませんこれから読もうと思います)などのゴルフ漫画を描かれているかざま鋭二さんによるオムニバス形式の短編集。
かざま鋭二さん、結構お年を召してらっしゃるのに、今でも全然画力が衰えませんね。人の描きわけやゴルフなどの動きのある人物、背景など文句なしに素晴らしいです。
トーナメント中の打球事故でツアーの世界から身を引きゴルフ場カントリー俱楽部で副支配人を務める元プロゴルファー・藤堂冬次と、藤堂の打球を受けて車椅子生活になった少女・白川夏海。その2人を中心にした、名門ゴルフ場にまつわるちょっといい話集です。
中には結構考えさせるような話もあって、なんだろう、ゴルフ版のブラック・ジャック的な?冬次がブラック・ジャックで夏海がピノコ。冬次が保護者のつもりでも夏海は冬次のことを想っているのも一緒です。いや、主人公が真面目すぎるほど真面目なのでブラックな展開はないですが。
掲載誌ゆえか、ヤクザやAV女優などの話は出てきます。かなり上品にまとめていますが、セックス描写も意外とあります。あと、ネタ切れなのかテコ入れなのか3巻は恋愛セックス描写が多いです。
読み切りゆえ、先が見えなくてどうなるんだろうというハラハラドキドキ感などはありませんが、絵も話も安定していて安心して読めます。一話完結の読み切りなので、思い立ったときに少しづつ読めるのもいいですね。
ページが足りないのか、夏海の両親のことなどなんか雑というか分かりづらかったり。もうちょっと描写してほしいようなところをさらっと流しすぎているような感じもあるので(私の読解力が足りないの?)
できれば毎回読み切りにこだわらずに連作などもあったりしたら嬉しいなと思います。
あとは登場人物にいけ好かない奴も当然出てくるんですが、ほぼ全員根はいい奴なのか、ちょっと注意されるとすぐに反省したり悪かったところを改善したりしすぎるきらいがある気がします。私くらいの年齢になるとそんなに世の中善人ばかりじゃないよ悪いやつはどこまでいっても悪いやつだよと思ってしまうのですが、それは私が捻くれているからでしょうか。
メタ的なことを言うと、一話のうちに改心させないといけないのでしょうけど、別に改心せずに後味が悪い話があってもいいのになと思ったりします。とはいえ人情話なんて、そんなものかもしれませんね。このへんは好みでしょう。抜群の安定感はあるので、漫画を読んで嫌な気分になりたくない方にお勧めします。